2018-2019 ラオス旅行記 vol.2
【vol2.の道のり】
12/30 ビエンチャン→ルアンパバン
…だけ⁉︎
だけっす。すんません。
【前回はこちら】
ビエンチャンからルアンパバン空港に到着した頃には、辺りはもうすっかり夜になっていました。
「予約したホテルまでどうやってたどり着けばいいんだろう」という面倒な問題は頭の隅にギュッとねじ込み、エコノミーシートで損ねたヒザの機嫌をとるべく屈伸運動に精を出していたところ、バックパッカー風の若い白人アベックがチラチラとこちらを見ていることに気が付きました。
祖国ニッポンでは、見知らぬ他人様がチラチラとこちらを見ていた場合、
「オォ?」「アァン?」「ナメトンカワレ」
といった呪詛を唱えつつ相手に近づき、胸ぐらを摑んでそのまま顔に勢いよく唾を吐きかけるのが男性社会のマナー、所謂パンキョーであるわけですが、なにせここは異国の地、自分たちの文化を知ってもらいたい気持ちをグッと堪えて「ハロー!」と笑顔で挨拶をしました。
件の白人アベックと話してみると、
「タクシー代を安くあげるために、互いのホテル近くの大通りまで相乗りしよう」
といういかにも三文旅行記にありがちな展開となり、適当に呼び止めて適当に値段交渉した適当なおっさんのトクトクに4人して乗り込みました。
走行中、ルアンパバンの生温かい夜風に揺られながら「このままホテル近くに到着して後は寝るだけ〜!」という安心感で、目の玉ロンパリ涎垂れ流し職質待ったなしのマヌケ面でボケーッとしている私に、チャーリー・セクストン似のナイスガイな彼氏は持ち前のサービス精神を過剰に発揮して到着までの20分余りの間、身振り手振りも交えながら継ぎ目なく楽しげに話をしてくれました。
しかし、こちら側の体力と学力の問題上「俺たちはジュネーブから来た」以外に何を言ってるのか全然分からないまま笑顔で永久に別れました。
適当に値切りすぎたせいか、トクトクのおっさんは予定していた場所よりも離れた地点で半ば職務放棄的に俺たちを降ろし、渋々夜の大通りを地図片手にえっちらおっちら15分ほど歩いたところで、ようやく事前に予約したホテルを発見しました。
チェックインのため受付に向かうと、一目で「これは!面倒臭い!」と分かる書類手続きを求められたので、それらをまるっと友人に押し付け、一足先にソファの割れ目に顔を埋めたり、ウェルカムドリンクを注文したり、生ぬるいレモンスカッシュにむせ返ったりしているうちに全ての手続きが済んでおりました。
もちろんこのホテルを探して予約してくれたのも友人です。多謝多謝。我愛你。
やっとこさ部屋に案内され、悲願であった重い重いバックパックからの解放を果たしました。
この時すでに弱音だけで写経が出来るぐらいには疲弊しきっていた私は、我先にとズボンを脱ぎ脇目も振らずに布団&枕ズとよろしく乳繰り合い始めていたのですが、友人の方を見ると、なにやら"ジョニー大倉のロックンロール抜き"みたいな風貌の従業員から地元ナイトマーケットの場所を聞き出しています。
「えぇ…」を惜しみなく漏らす俺の顔を見ながら彼は、
「今から一緒に行こうや」
と、ことも無げに言い放ちました。
もし、この時の僕の<行きたくなさ>が握力に変換されたら、250kgを悠々と上回り、エリックファミリーを軒並みリング上でぶち殺したのち消息を絶ってプロレス界の永遠の語り草となるほどでしたが、実際はもはや舌打ちをする気力すら残っていなかったので言われるがまま、ヤブだと分かりきっている歯医者に行く心持ちでルアンパバンのナイトマーケットへと向かいました。
過去のタイ&ベトナム旅行時の経験から淡く期待はしていたのですが、ラオスTシャツの、「脳みそを出来るだけ使わずに作りました!」的な、どこをどう間違っても高級品には見られないチープイズクールなデザインの数々に魅せられ、うっかりユルユルのガバガバになろうとする財布の純潔を守るのに一苦労でした。
もしも私が「おじいちゃんおばあちゃん(ワンセット)なら、速攻その場で生命保険を解約、店ごと丸々買い占めていたところですが、結局のところ私はおじいちゃんおばあちゃん(ワンセット)ではなかったので普通に気に入ったものを2枚買って店を後にしました。
その後数ブロック歩いたところで、大量の怪しげなビンに囲まれた、上品めに言って"穢多非人スタイル"の老婆に呼び止められ、コブラやサソリの死骸がもりもり浮いているアントン・ラヴェイのおやつみたいなウォッカを勧められるがまま、5杯6杯と飲み干しました。
そして、老婆が7杯目を差し出してきたあたりで生来酒に弱い宿命を背負う友人の顔色は腐り落ちて爆ぜた隣家の柿のようになり、唇小刻みに震えわせながら「行こ、死ぬ」と繰り返し始めたので、逃げるようにその場を去りました。
すでに酩酊というよりは軽いてんかんに近い震え方をしている友人の背中をさすりながらマーケットの最奥まで進むと、そこには大きなライブステージが特設されており、愛らしいドレスを着た現地の女性がポンチャックよりぺらぺらな二拍子爆音オケにのせて、異様なほど抑揚のない歌声を披露しておりました。
その"ラオス製の李博士"みたいな音の津波に、先ほどのサタニズムウォッカ7連発で軽く融解させられていた脳みそは完全にメルトダウン。下手なクラブの泡パーティよりも踊ってしまった気がします。
"気がします"という妙な言い方をしたのは、不思議とこの時の記憶だけがすっぽりプチ・ブラックアウトしており、思い出すことが出来ないからです。そんなトルエンみたいな青臭アシッド体験でこの日のナイトマーケットは幕引きとしました。
余談ですが泡パーティには一度も行ったこともないし誘われたことすらありません、見栄を張りました。
不気味なアルコールと不快な轟音による動物実験的苦痛に苛まれる中、「なんでもいいから胃に放り込もう」という方向で二人の欲求は合致し、帰り道はレストランにすかさず飛び込みました。
一般的な旅ブログにとって肝心要と言える食事内容については一切覚えていないので写真を見て判断する限り、"カオニャオ(a.k.a 無味おはぎ)"と"ラープ(a.k.a.酸っぱ辛挽肉)"、"カオソーイ(a.k.a 薄カレーラーメン)"などを食べた気がします。
前回にも書いたのですが、ラオス料理の味付けはかなり口に合うので、ウマイウマイとたらふく食ったおかげですっかり元気と体力を取り戻し、
「いやぁ、来てよかったなぁー」
「明日はなにして遊ぼうか!」
などと二人で笑い合いながらホテルに帰ってぐっすり眠りました。
次回vol.3では二人共バイク事故で死にかけます、他人の不幸の詳細を乞うご期待!
【続きはこちら】