2018-2019 ラオス旅行記 vol.4
【vol4.の道のり】
01/01 ルアンパバーン-クアンシー滝周辺
この欄いります?
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「秋がやって来たぞ〜」と見上げていた紅葉が翌朝には全て散っているような速度で冬になりましたが、皆さま体調も崩さずお元気にされていますか?
元気に食べ物を食べたり、飲み物を飲んだり、歩道に仰向けにぶっ倒れている爺に大丈夫ですかと尋ねて、
「…寝とるだけやぇ!!」
と叱られたりしていますか?私はしています。お久しぶりです、ナガタです。
世間はもうすぐクリスマスなわけですが、二十歳の私がガールズバーでバーテンダーandご意見番and痰壷として働いてた頃、イヴの夜に小汚い爺が一人で来店しまして、カウンターに座るなりおもむろにビニール袋に入った栗を取り出し、店の女の子たちに配り始めたんです。
突然の小汚い秋の再訪に、もちろん店内の気温は外気を大きく下回ったわけですが、爺は懸命に、
「エミちゃんの栗はこのくらいかなあー?ユリカちゃんの栗は…」
と、次元の低すぎる下ネタを添えて栗を配り続けます。
しかし、朝も昼もまとめて夜に売り渡したアマゾネス達にとってはドリンクも奢らない爺の下ネタなど児戯に等しく、石のように口を閉ざして冷笑すら返しません。
あまりの空気に耐えかねた私が、
「飲み物はトリスでいいですか?」
とせめてもの手向けを送ったところ、ようやく何人かの女の子が少し笑い出し、ホッと胸をなでおろしました。
その一言が仇となります。
一世一代の下ネタを”持っていかれた”と思った爺は顔を赤らめて逆上、血圧が心配になるほどの青筋を立て、
「これ一本入れっから!お前一気に飲め!!!」
と叫びます。
無論、そんなことはできないのでいつものように薄ら笑いでやり過ごしていたところ、無慈悲にも一部始終を見ていた客達がコールをし始めたことで風雲は急を告げます。
救済を求めてアマゾネス達を見ると彼女たちはころりと寝返って、楽しそうに叫んでいます。
「イッキ!イッキ!」
「イッキ!イッキ!イッキ!」
「イッキ!イッキ!イッキ!イッキ!」
「イッキ!イ キ! ッキ! キ!…
…目を覚ますと知らない畳の上で毛布を被っていました。
頭痛と吐き気を堪えて部屋を出てみると、これまた見知らぬ爺が朝食を食べています。彼は事態が飲み込めないで立ち尽くす私に『泥酔して玄関先に倒れている若造を助けたお話』を語ってくれました。
お礼を言って家を後にしようとしたところ、奥方らしき写真が飾られた仏壇に『甘栗むいちゃいました』が供えられているのを見つけて、"運命"というもののしょうもなさに鳥肌が立ちました。知らない爺ABと過ごすクリスマスも悪くないものです。
さて、余りにも長い前置きを見て賢明な読者の方々は既にお気付きかと思われますが、今回は<たいして書くことがないの回>です。爺のエピソードは水増しにはもってこいです。
なので、多少駆け足気味にはなりますが、いつもと変わらぬご支援ご協力ご嘲笑を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。
前回、死線をゆるやかにさまよった挙句到着したのは、"バーン・サーンハイ"という村で、普通に書けば"クソ田舎"、良いように書けば"のどかな小さな村"です。
この村からは”パークウー洞窟”への船が出てまして、そこは4000体もの仏像が安置されている事でそこそこ有名な観光地になっているのです。
はっきり言って興味もないし、むち打ちで身体中痛いのでこのまま引き上げてもよかったのですが友人が、
「4000体の仏像やで?俺は絶対見たい」
とか言うので、(早食いのくせに信仰心はあるんだな…)と感心して着いて行くことにしました。
村ではたくさんの子供達が嫌な顔一つせず懸命に働いています。日本もこれに見習って、子供たちには進研ゼミなんて無駄なことはさせず、無料の労働力として絞り尽くした後はカブと煮込んでシチューにするのがいいのかもしれません。
『半壊したボート小屋にあるのは、半壊したボートである。』という名言がありますが、船首が大丈夫だと言ってはばからないので、"最悪泳げる距離っぽい"を確認した上で乗り込みました。エンジンは何度引っ張ってもかかりません。
冷めきった目でかからないエンジンを眺め続ける我々の横を、立派な屋形船が悠然と川を渡ってゆきます。地獄の沙汰も仏像を拝むのも金次第です。
辿り着いた"パークウー洞窟"には、前情報の通りに大量の仏像が安置されていました。
人間は、"すごい多い"とか"すごい大きい"にとりあえず圧倒されてしまうもので、しばらくはその絢爛さに目を奪われていたのですが、一つ一つを細かく見てみると中には明らかに手を抜いているものもあり、
「とにかく数をいっぱい集めたいんだ!」
「クォリティ?後だ!」
というシマリス的な強迫神経症を患った教徒がかつていたのだろうなとしみじみしました。
やはりというか洞窟周辺は観光客目当ての商売人でいっぱいで、一人の女の子が得体の知れない生魚を売りつけようと友人に終始張り付いていました。
食うのか飼うのか、用途不明の命を問答無用に売ることも4000体の仏像の前では一切が赦されています。
一度ホテルに帰って簡単な止血などをした後、夕食のために再度出かけました。
<不安、ここに極まれり>といった見てくれの橋を恐る恐る渡ってみると、到底似つかわしくない小洒落たレストランがありました。
そこはどうやら"ラオス風すき焼き"のお店らしく、価格は日本円にして2500円弱と、今考えると決して高くはないのですが、すでに金銭感覚が"東南アジアモード"となってしまっている我々には叙々苑(ディナー)に等しく、背筋を正して今年最後の晩餐をここでとることにしました。
ラオス風すき焼きの味は、"アジアかぶれの女がコンソメスープに訳のわからない調味料を入れまくった"ような、普通のでいいのに系のものでしたが、隣のテーブルに座っていたゲイカップルと思しき白人男性が、相手の目をじーっと見つめながら卵のお尻に箸の先をぐりぐりして穴を開けていて、「いつか自分もこうやってベッドに誘ってみたい!」と、十分に前向き感のある食事となりました。
腹ごしらえの済ませて今年最後の礼拝に参加した後、例の爆音ポンチャックが流れていた特設ステージ[vol.2参照: 2018-2019 ラオス旅行記 vol.2 - ホワイトブログ・ラングドシャ]に、年越しのカウントダウンを見に行きました。
壇上ではおそらく知事とか議員とかであろうそこらへんの偉い方々が長々と演説をぶっています。<まあまあ恰幅のいい初老男性が背広を着てステージで喋ると結構偉い人に見える>というのは万国共通のようです。
遂に2019年を迎え、いかにもB級C級な花火がしどけなく打ち上げられます。
現場には多くの白人カップルがいたので「絶対にキスしてるはずだ!」という好奇心を抑えきれずに辺りをキョロキョロしてみると、
ちゃんとしていて、おかげで胸が"年越しだなぁ"で一杯になりました。
次回はようやくルアンパバーンを出ます。
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